NPO法人 心のSOSサポートネット設立趣旨書

  1. 趣 旨(定款に定められている目的)
  2. この法人は、我が国における自殺率の高さを危惧し、今まさに自殺の危機にある人々を早期に見つけ、援助していく効果的な方法を開発、実践し、より洗練された支援に発展させるために設立する。
    自殺は決して個人的な自由意志や、崇高な目的による場合も肯定されるものではない。
    自殺は様々な悩みにより心理的に追い込まれ、苦悩し、自己を傷付け、死という選択しか残らなかった結果である。
    心理的に追い込まれる原因には

    1. 癌のような治りにくい病気に罹患するなどの「身体的健康問題」
    2. 経済的破綻、失業、多重債務、長時間労働、近所づきあいや職場内の人間関係における共感性の希薄化などといった「社会的問題」
    3. 老老介護、看病疲れ、親子・夫婦関係の軋轢といった「家庭問題」
    4. 当事者本人のストレス耐性、性格要因、死生観などがある。

    さらに重要なことは、このように心理的に追い込まれ、自殺を考えてしまう人々は気分障害、統合失調症、アルコール依存症などの精神疾患に罹患していることが多い。
    これらの疾患があると冷静な判断ができなくなる。
    たとえば「自分のためにみんなが不幸になる」などの罪業妄想をもつ、大うつ病エピソードではみんなの幸せを守るために死を選んでしまう。
    自殺を予防するには精神保健の普及および啓発をはじめ、様々な達成課題が残されている。
    適切な相談・援助を受けることなく自殺既遂してしまう精神障害当事者が適切な時期に保健・医療制度を利用していただきやすくし、その命を守ることに寄与することを目的とした活動を中心に展開していく。
    その実践において明らかとなるリスクファクターに対してもより柔軟な対応を行うことも予定している。

    事業に係る社会経済情勢やその問題点
    1998年に我が国の自殺者数は年間3万人を超えた。
    経済の低迷、失業率の上昇に比例し自殺率が増えているため、社会経済情勢の影響が自殺率に多大な影響を与えているのは言うまでもない。
    一方で日本より失業率が高く、経済成長率が低い国でも自殺率が低い国もあれば、近年まれにみる経済成長率を遂げている中国においても決して自殺率が減少しているとは言えない。
    地域の文化背景、国民の自殺に対する死生観、あるいは自殺予防の取り組みの実践の有無、他者への思いやりなど様々な問題から自ら死を選択してしまう人々が増え続けていることが考えられる。
    その意味で出来る限り地域の特性に合わせた自殺対策の整備が必要であり、まず全国でも高い自殺率である和歌山県での自殺問題に包括的に取り組み、いずれは日本全国、アジアの自殺予防のために寄与するための事業活動を行う予定である。

    法人が行う事業が不特定かつ多数のものの利益に寄与するゆえん
    一人の人が自殺すると少なくとも6人の方にとても大きな悲嘆を与えると言われている。
    まして自殺をおこす可能性の高いメランコリー親和型のうつ病の人は生活、仕事にとても熱心であり、後進の指導から、社会経済的な活動への貢献度はとても高い。
    家族への思いやりもあり周囲の人々に与える影響度は計り知れない。
    そのような人の死亡は社会的喪失であることは言うまでもない。
    経済的には年間3万人を超える自殺者を出す我が国の経済的喪失は2,7兆円と言われている。
    自殺者を救うことは不特定かつ多数のものの利益に寄与することは言うまでもない。

    法人格が必要となった理由
    すでに当NPO団体は自殺予防のための研修会、ワークショップなどを開催している。
    厚生労働省の研究補助金の援助申請、自治体の自殺対策総合大綱に基づく予算援助、各種の精神保健普及啓発事業に係る活動の公明性、予算収支の透明性、活動母体の信用性などを考慮すると法人格取得が必要となった。

  3. 申請に至るまでの経過
  4. 精神保健の普及・啓発を目的としている。
    特に和歌山県をはじめ全国の自殺率の増加は、我が国の精神保健福祉の大きな問題である。
    平成16年から平成18年までの救急救命センターに搬送された自殺未遂者および自殺既遂者の背景調査の結果、自殺を既遂してしまうほとんどの方は事前に相談することなく、また一回目の自殺企図で命を落としてしまっていることが明らかになった。
    そのため自殺を考えてしまった方に対する早期の援助を可能とするためのゲートキーパーの養成は急務である。
    さらに自殺未遂を繰り返しいつかは命を落としてしまうような方への心理的アプローチの確立も必要である。
    また自殺の誘因の一つとして「健康問題」があげられるが、中でも「癌」に罹患した方の自殺が多い。
    そのため緩和医療の充実を当事者レベルで支えていける活動も必要である。
    行政レベルで様々な施策が進められており、その成果が期待されるが、当事者により近い立場で自殺をはじめ、さまざまな心の問題に関しての普及・啓発活動を行うための団体を設立したいとの趣旨で申請するものである。

2010年11月11日
特定非営利活動法人 心のSOSサポートネット
東 睦広